鬱や不安症などの精神疾患はどんなメカニズムで起きるのか？

鬱や不安症などの精神疾患はどんなメカニズムで起きるのか？

鬱や不安症群などの精神疾患が、どの様なメカニズムで引き起こされているのかは、結論から言えば未だ解明されていません。

というよりも、自律神経系なども含みいわゆる「脳」が関係する疾患は全て、人体実験の倫理上の観点からも仮説の域を出る事は恐らく無いでしょう。

いくつかの有力な仮説は既に提唱されています。

現在最も有力とされているのは『モノアミン仮説』と呼ばれる神経伝達物質に基づく仮説で、当院でもこの仮説を基に患者さんに説明させていただいています。

1960年代の研究で、抗うつ薬を与えられた動物実験があり、脳の神経伝達物質であるセロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンなどのモノアミン系が各神経細胞の末端にあるシナプス（神経細胞の接合部）で増加していることがわかりました。

これがモノアミン仮説の大まかな説明です。

うつ病はこれらの神経伝達物質が欠乏しているのではないか？と考えられており、現在使用されている多くの抗うつ薬は、この『モノアミン仮説』を元に開発されています。

ただし、大まかには解明されていますが、全容は？と言われれば正直誰にもわかりません。

例えば「うつ病」です。

うつ病が起きるメカニズムはそれほど単純ではなく、抗うつ薬投与後にモノアミンの増加はすぐにみられますが、抗うつ効果が現れるには数週間かかってしまいます。

また、モノアミンを減少させる薬を飲んでも全ての人がうつ病になるわけではなく、この仮説だけでは十分に説明することができないのです。

が！しかし！

メカニズムが分からない＝治せない（治らない）か？は別の話です。

皆さんがよくご存じの高血圧（正しくは本態性高血圧症）ですが、これも原因は不明です。

しかし、お医者さんは「適度な運動、食事、睡眠で治るよ」と言いますし、実際にそれで効果があるのです。

うつ病も、不安症も、自律神経系の症状も同じです。

QOLの向上・生活習慣の改善・運動療法・心理療法が治療の要になります。

「適度」というのがどれくらいなのか？

「治るまでの期間」はどれくらいなのか？

それも仮説と同じで十分に説明することは誰にもできません。

説明はできませんが、治る可能性が現段階で一番高い方法です。

現段階の医療の限界を知って頂けると幸いです。