『生活習慣』改善しないワケ

自分の生活習慣に点数をつけた場合、満点をつける人はそれほど多くありません。大概の人は『一病息災』で、大病を患って初めて生活習慣に目を向けはじめます。

なにせ自分の命が係っているわけですから、手術や投薬以外に何か注意すべきことは無いか？医師の助言を必死になって聞くようになります。

それが禁煙や禁酒など、今まで散々苦労しても止められなかった習慣であっても、ピタッと止めるわけです。滅多な人でも残りの人生を惜しむためにはこれまでの習慣を改善するしかないのです。

ところが、大病とは言えない不定愁訴（肩がこる、腰が痛い、頭が重いなど）の場合、ほとんどの患者さんは原因が生活習慣にあると半ば分かっていても、悪習慣を止めようとは思いません。それどころか、あの手この手で言い訳のような行動をしてでも、何とか今の習慣を持続させようとします。

『酒、煙草を止めずとも運動や食事に気を付ければ良いだろう。』

『肥満数値が高くても、食べてストレスを発散しているのだから。』

『平日寝不足でも週末に寝ダメしているから大丈夫』

そうやって日々の生活が多少辛くとも、直接命に関わりはしない状態。いうなれば『半病人』の様な状態でも何とか騙し騙し生活をしていくわけです。

そこには職場・家庭などの環境や、本人の惰性など様々な要因がありますが、いずれも緊急を要するものではないはず。という意識的かつ軽率な選択です。

高校受験や大学受験の時分、皆さんは勉強が十分に足りていた。もうこれ以上の時間は要らない。と思いましたか？十分だと思う人には無意味な講釈ですが、ほとんどの人は違うでしょう。『もっと早くから本気で取り組んでいたら良かった』『本番まであと数日しかないのに、どうしよう』この状況になっていくら勉強に励んでみても、志望校の合格ラインは変わりません。気づいた時にはもう遅いのが世の常です。

病気や症状の予防と治療において、受験勉強にあたるものは何でしょう？考えるまでもなく『生活習慣』です。受験の様にチャンスは1度切りではありませんが、絶対に不合格になってはいけないのが健康です。

受験の失敗が人生を左右するとは思っていませんが、初めから『試験問題』が分かっていたら。どうします？たとえそれが1000問あっても私なら覚えると思います。

受験の場合、試験後になって問題開示され、その答えを知ったからと言って結果が変わることはありません。ですが健康は違います。問題は初めからぼんやりと分かっているはずです。寝不足、運動不足、暴飲暴食・・・etc

『経験した』と『知っている』は違います。しかし、大病を患い苦い経験をした先人も、大病を研究しその状態知っている専門家も、アドバイスは同じ様なものになるはずです。

ドイツの名宰相ビスマルクの『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があります。当然ながら、先人たちは多くの失敗と成功を繰り返し、その経験の中から歴史という形で我々後世の者に貴重な経験談を残してくれているのです。それは医療の歴史でもあります。これを学ばない手はありません。

ピーター・ドラッガーは、「未来は過去の延長線上にある」と言いました。良くも悪くも現在、そして未来は全て、過去の出来事が基盤となって表れた現象でしかありません。この格言には、次の言葉が付け加えられています。

「そして聖人は経験から悟る」

2つの格言をつなげるならば、『愚者は経験から悟れば聖人』です(笑)

早めに過ちを悟る聖人様になるか。

いつまでも悟らず愚者のままか。