痛みの悪循環を断つには

『安静にする事で痛みはそのうち治る』

ほとんどの患者さんが信じている治療法です。

しかし、残念ながらそれは癌性痛や重篤な病気を除く、急性疼痛に限ります。

慢性疼痛の場合、安静はかえって痛みを長引かせる悪循環の基となります。

どの様に痛みの悪循環が生じるのか？

① 痛み　→　②痛みに対する不安や恐怖（精神的不調）　→　③活動性の低下（ADL/QOLの低下）　→④筋力や身体機能の低下　→　⑤廃用症候群

①～⑤そしてさらに①の悪化

慢性疼痛の場合、ほとんどの患者さんがこのような悪循環に陥っています。

こんな時に『安静にしていればそのうち治る』という考えは、非常に危険です。

精神的不調が長引けば、鬱や不眠に繋がるリスクが増えます。

活動性の低下は肥満や筋力低下に繋がり、関節症の基です。

こうなってしまっては『痛みが治ったら動く』は永遠と訪れないでしょう。

では、どうすればいいのか？

悪循環を逆にするのです。

①痛くても動いてみる（酷くならない範囲）　→　②身体機能が向上する　→　③活動性が向上しADL/QOLが向上する　→　④不安や恐怖が減る・改善する

→　⑤痛みが軽快する

痛みに生活を支配されるのではなく、生活で痛みをコントロールするのです。

実際に『手術しかありません』『歳だからしょうがありません』『痛みを誤魔化して生活するしかない』と言われてきた患者さんが、軽快な生活を送れるまでになってきた例を私は何度も見てきました。

これは、痛みだけでなく精神的な症状でも同じと言えるでしょう。

悪循環を断つには、症状の悪化を極度に恐れず、できる行動をすることから始めましょう。