睡眠薬の知っておきたい基本情報

 

睡眠改善薬・睡眠導入剤・眠剤・催眠薬など、呼び方は色々ありますが、睡眠に用いるお薬を総じて「睡眠薬」と言います。

 

睡眠導入剤は安全で、催眠薬は危ない、と思っている方がたまにいらっしゃいますがそういう違いではありません。

 

「睡眠薬」については、色々な先生がネットに情報を挙げていますので、ここではとりあえず基本的な情報を簡単に紹介しようと思います。

 

睡眠薬の2つの分類

強制睡眠系

現在、睡眠障害治療の中心となって使われているのが、こちらの睡眠薬で、ほとんどの場合はこのタイプになるかと思います。

 

メカニズムを簡単に説明すると、興奮している「脳の機能」を低下させることによって、睡眠状態へと導くお薬です。

 

主な種類としては「ベンゾジアゼピン系薬剤」と「非ベンゾジアゼピン系薬剤」の２つがあります。

 

ベンゾと非ベンゾの違いは効果が2つあるか1つあるかです。

 

・ ベンゾ　　→　ω1（睡眠作用）　+　ω2（筋弛緩作用・抗不安作用）

・ 非ベンゾ　→　ω1（睡眠作用）

 

「非」の字がついているので勘違いしやすいですが、ベンゾジアゼピン受容体に作用するのはどちらも同じなので、非ベンゾもベンゾです。

 

注意しておきたいのが、強制系睡眠薬の「睡眠」というのは単なる比喩で、脳の機能を低下させることでおこる「意識消失（失神）」だと言うことです。

 

薬の持ち越し効果と言って、効き目が朝になっても抜けない場合が多く、スッキリと起きられるケースは私が患者さんを診ている限り稀です。

 

ベンゾ系はその作用から、睡眠導入剤の他に、抗不安薬とか、筋弛緩剤とか、時には痛み止めとして処方されている患者さんもいらっしゃいます。

 

効き目は鋭く、疲れ切った時の様に眠ってしまいますが、長期間の服用は日常生活に支障をきたすので、個人的にはお勧めしません。

 

実際、海外ではかなり慎重に処方されているのですが、2010年の国際麻薬統制委員会では、日本でのベンゾジアゼピン系の消費量の多さの原因に、医師による不適切な処方があるとしてします。

 

強制系は他にも「バルビツール酸系」というのもありますが、リスクの問題から最近ではほぼ使われていません。

 

ウチの患者さんが特によく処方されるベンゾジアゼピン系薬剤は以下になります。（商品名／一般名）

 

・ マイスリー／ゾルビデム

・ ハルシオン／トリアゾラム

・ デパス／エチゾラム

・ レンドルミン／プロチゾラム

 

他にもめちゃくちゃ沢山ありますが覚えきれないので、それっぽいお薬を処方されたら検索すると良いでしょう。

 

※副作用を調べると色々不安になるかもしれませんが、自己判断で急に飲むのを止めるのは本当に危険です。絶対にお医者さんに相談しましょう。

 

自然睡眠系

ベンゾの様な強制睡眠に対し、人本来の睡眠周期に作用して眠りを促したり、深くしたりするのがこちらのタイプです。

 

メカニズムとしては、生理的な自然睡眠を促す形になりますが、強制的な鋭さが無い分、効果には個人差があります。

 

「メラトニン受容体作動薬」

 

体内時計のリズムを司っている「メラトニン」の働きを強めるお薬です。

 

メラトニンは20時頃から分泌され、深夜1～2時頃をピークに、明け方になると光をあびて消えていくという物質で、年齢を経るごとに分泌量が減少するといわれていて、ロゼレムはこのメリハリをつけるお薬です

 

・ロゼレム／メラトベル

 

「オレキシン受容体拮抗薬」

 

覚醒状態時に働いている「オレキシン」という物質の働きをブロックし、睡眠状態へスイッチを切り替えていくお薬です。

 

オレキシンは生理的に変動している物質で、日中は増加して夜間は減少しています。

 

特にデエビゴは同じタイプのベルソムラと比較して、入眠障害に対しても効果が期待できるので、最近は処方される患者さんが多くなってきている気がします。

 

・ベルソムラ／スボレキサント

・デエビゴ／レンボレキサント

 

睡眠は、様々な要因でバランスをとっている生理現象です。

 

お薬での改善もありますが、あくまで生活習慣の改善を基礎にして行く事を忘れないようにしましょう。