自律神経の乱れによる不調は非常に多彩です。
動悸、息苦しさ、めまい、下痢・便秘、不眠、不安感…
症状はまさに十人十色で、病院の検査でも「特定の診断がつかない」とされることは珍しくありません。
診断名がわからないと困るのでは?と、ほとんどの患者さんは思うでしょうが、実はそうでもありません。
何故なら、どんなに症状が違っても、自律神経の乱れによる症状であれば「整えるべき土台」はあまり変わらないからです。
今回は、自律神経アプローチの基本にあるこの「共通の土台」について、整体院サンテの解釈を解説してみます。
まず大前提として、「症状が違えば治療法も異なる」という考え方は病気や怪我の場合は正しいです。
私たちはそのように育ってきたため、「診断名は何なのか?」「診断名がわかれば治療法がわかる」逆に「診断名がわからなければ治療法がわからない」「症状によって治療法は異なるはず」といった固定概念があります。
【例】
これらは「一部が壊れた状態」であり、壊れた部位に応じて局所的な対処・補填が必要な領域だからです。
しかし、これは主に器質(組織や細胞)的疾患や外傷、感染症といった、いわゆる“局所の異常”には当てはまりますが、実は自律神経の症状の場合その限りではありません。
自律神経が乱れての不調(自律神経失調症)は、器質的な異常が明確に存在しない場合が多く、局所というよりも全身的な機能的調和(ホメオスタシス)が崩れた状態として捉えられます。
【例】
これらは症状が違いますが、治療方法は全く異なるでしょうか?
実はあまり違いはありません。
根っこにあるのは「自律神経の働きが乱れた結果」だからです。
つまり、どこか1か所の問題ではなく、全身の自律的な調節が機能不全を起こしているという意味で、「システム全体のバランス障害」と考えるのが自律神経症状の本質です。
症状の出方が違っても、その背景には共通する生理的・心理的な要因が存在し、アプローチすべき“根っこ”をどう整えるのか?
それが、「自律神経を整える」という事に繋がります。
自律神経症状にある共通項目として、整体院サンテで重視しているのは以下の5つです。
1. 呼吸の質の低下(胸式・速い呼吸、過換気傾向)
2. 内臓(特に消化器系)の緊張と血流低下
3. 睡眠の質の悪化(中途覚醒・交感神経優位のまま就寝)
4. 脳疲労・認知的緊張状態(思考過多・不安傾向)
5. 交感神経優位の持続(常時オンモードの神経環境)
これらは個々の症状に関係なく、慢性的な自律神経の機能低下に共通して見られるパターンです。
※これらを引き起こしている要因に、「心理社会的要因」や「思考の癖」などが関係してくることはまた別の機会にお話しします。
たとえば、
・動悸が主訴でも呼吸の浅さと過覚醒がある
・便秘でも腸管の蠕動と迷走神経の働きが抑制されている
・不眠でも脳の過活動と内臓緊張が背景にある
こういった“自律神経の下流”にある部位的症状ではなく、
“自律神経の上流”にある恒常性調整のしくみの崩れを見つめることが回復への鍵になります。
このような前提に立てば、
どの症状であっても、以下のような方向性での介入が必要になります。
つまり、症状に対して直接処置を行うというより、“整えるべき共通構造”に働きかけるアプローチが求められるのです。
【まとめ】
自律神経の不調とは、「症状の違いを診るもの」ではなく、「構造の乱れを整えるもの」であると私は考えています。
症状が違って見えても、整えるべきものは深いところでつながっている。
それが「根っこは同じ」という言葉の意味です。
次回は、「副交感神経が働けない状態」とは何かについて、
もう少し具体的に整理していきましょう。
投稿日:2025年6月21日
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