薬の話『NSAIDs』(エヌセイズ)

慢性疼痛、心身症、精神疾患でお悩みの患者さんは、病院で色々なお薬を処方されていると思います。一概にお薬といってもその種類は様々で、自分が飲んでいるお薬の事をよく知らない場合が多いです。

そんなお薬について、知っていると役立つ情報を今回から数回に分けて話していきます。患者さんへの説明が目的なので、なるべく簡単に書きます。

NSAIDsの説明

NSAIDs（エヌセイズ）とは、Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略で『非ステロイド性抗炎症薬』のことです。

「痛み止め」として処方されますが、作用は『炎症』を抑えることであり、正しくは「抗炎症薬」です。全ての痛みに効くわけではありません。

『炎症』というのは、腫れて熱がある感じや、赤くなって痛みがある状態のことを言います。捻挫や抜歯などが炎症に当たります。

NSAIDsは大きく分けて、非選択的NSAIDs と選択的NSAIDs があります。

《非選択的NSAIDs》

・ ロキソプロフェン（ロキソニン）

・ アスピリン（バファリン）

・ ジクロフェナク（ボルタレン）

・ イブプロフェン（イブ）

・ エテンザミド（ノーシン）

・ その他

《選択的NSAIDs》

・ セレコキシブ（セレコックス）

NSAIDsの作用と副作用

NSAIDsは、プロスタグランジンという炎症を引き起こす物質の生成を抑えることで、炎症にともなう痛みや腫れを緩和します。

一方で、プロスタグランジンを抑えることで生じる副作用もあります。

《血圧の変動》

高血圧の方でなくても、痛みや炎症を抑えられる量を使うことで、血圧が上昇します。

《胃腸の障害》

よくあるのが胃痛ですが、長期間使用すると胃潰瘍や胃の出血をおこすことがあります。

《腎臓の障害》

腎に持病がある場合は、腎臓機能を悪化させます。

《出血》

胃潰瘍をはじめ、胃・食道・小腸からの出血を起こすことがあります。血小板の病気を持つ方は、血小板の機能が悪化し、出血しやすくなります。

補足

プラスタグランジンは、「シクロオキシゲナーゼ（COX）」とよばれる酵素によって作られるのですが、NSAIDsは、COXを阻害します。

COXには、胃粘膜の保護効果がある「COX-1」と炎症や発熱、痛みを引き起こす「COX-2」の2種類があります。

非選択的NSAIDs（ロキソニンなど）は、炎症や発熱、痛みを引き起こすCOX-2だけでなく、胃の保護作用があるCOX-1の両方を阻害してしまうため、胃を荒らすという副作用があります。

選択的NSAIDs（セレコックス）は、COX-１には作用せず、COX-２に選択的に作用するため、胃を荒らす頻度が少なくなっています。

アセトアミノフェン

NSAIDsと混同されがちなものに、アセトアミノフェン（カロナールなど）があります。アセトアミノフェンの作用は解熱であって、NSAIDs（抗炎症作用） ではありません。NSAIDsとは異なる方法で同様の効果を発揮します。薬には成分にNSAIDsとアセトアミノフェンの両方が含まれるものが多くあります。

NSAIDsの注意点

慢性的な頭痛や生理痛、腹痛や腰痛でロキソニンなどのNSAIDsを飲む患者さんが多くいらっしゃいます。炎症が起こるのは、ほとんどの場合は急性期です。

慢性疼痛の原因は、炎症ではありませんので、効果はありません！

※プラシーボ効果（偽薬効果）で、痛みが軽減する例はあります。

漫然と服用を続けると、副作用によりかえって疼痛が酷くなりますので、注意してください。