アニメ療法～心をケアするエンターテインメント～

心理療法の一つに「アニメ療法」という治療法があります。

抑うつ、不安、引きこもりといったメンタル不調に悩む若者の心を「アニメ」がケアする。というアニメ療法は、慶應義塾大学病院精神・神経科学教室の精神科医であるパントー・フランチェスコ先生が発案されたそうです。

厚生労働省の統計では、日本の15～34歳の死因第1位は「自殺」となっており、これは先進国（G7）の中でも日本だけの現象だそうです。

「若者は、抑うつや不安を感じても、病院で治療を受けるという行為へのハードルが高い。心の病に対する抵抗感も強い。もしも精神科医に相談したとしても、年齢の異なる相手とは感性が異なり、理解されにくい。そして何よりも、メンタルヘルス対策には楽しさが欠けていることが、治療のモチベーションや継続を妨げています」

「欧米では精神科医はゆとりを持って患者を診察することができますが、日本の精神科医は開業しない限りクリニックの一職員にすぎず、初診も再診も限られた時間でしかお話できず、薬物治療が主体にならざるを得ません。カウンセリングは自費診療となるため、経済的に受けるのが難しいと感じる人も多い。この方には本当は薬物治療よりもご自身の人生の物語作りを再構築したほうが効果があるのでは、と思うと、悔しさを感じます」

そうパントー先生は言います。

コレ・・・めっちゃわかります。

日本で精神科とか心療内科に行くのって、凄く堅苦しいというか、特殊ですよね。

欧米をはじめ、海外ではカウンセリングは映画にも普通に出てくるくらい「日常」なのですが、日本では「えっ？精神科？大丈夫？」となります。

それは、まだ患者側のメンタルや心理社会的容認に対する認識レベルもさることながら、医療者側の治療に対する「固さ」があるように思えます。

『医療・治療なんだから真面目でちゃんとしたものでなければならない』

私にはそういう日本的な気質が、精神疾患治療を遅らせているように感じます。

実は、以前から私は患者さんにアニメやゲームをよく勧めていました。

理由は、楽しいし、程よく没頭できますし、私も良い経験をしたからです。

社会人になって独り暮らしを始めた当初、私は職場と家との往復の毎日で、リフレッシュの仕方が分かりませんでした。

地元でもないので、遊びに行く場所も分からず、一緒に言ったくれる友人も居らず、一人で休日はダラダラと過ごしていました。

そんな毎日が続くと、自然と心は不安定になっていき「今からの人生、ずーっとこんな感じの繰り返しなのかな？」と若干抑うつ状態になっていきました。

そんな時、職場の同僚が「ルパン三世」のDVDを貸してくれました。

これが面白いやら痛快やらで、毎晩見ました。

そうすると、いつの間にか家に帰るのがすごく楽しみになって、不安な気分を感じなくなりました。

それまでも仕事中に集中はしていましたが、楽しみと集中の緩急が付くことで余裕ができ、より一層励むことができたのです。

もはや、これは立派な心理療法です。

もちろん、見る作品にもよりますが、アニメは現実ではないので、演技も気になりませんし、何より気楽に見られます。

楽しいと感じる事は、心理療法を続ける時、非常に重要です。

「治療だから」と構えるのではなく、もっと気を楽にして臨んでもいいのではないでしょうか？

気を張り詰め過ぎて体調を壊したのに、身構えて治療をするのは本末転倒だと私は思います。

QOLの向上というのは、思っているより自由で、思っているより身近にあるものです。