自己理解を深める

慢性症状（特に精神疾患）を抱える患者さんは、共通して「自己理解」に悩まれることがあります。

自分は、どういう人間だっただろう？

何に対して幸福を感じ、何に対して一生懸命になり、何に対して安らぎを覚えていたのだろうか？

何が、どうして、これほどまでに辛いのかわからないが、とにかく辛い。

どうやったら、以前の様に戻れるのかわからない。

そう自分を見失ったように感じている方は、案外多いのではないでしょうか。

そんな時に効果的な心理療法の一つが「セルフモニタリング」です。

セルフモニタリングは、自己理解を深めて、自分の行動や感情をコントロールすることに役立ちます。

セルフモニタリングでは、自己観察を【状況・思考・気分・反応・行動】などに分けて記入していきます。

例を挙げましょう。

折居さんは、社会人になってから数年が経ち、以前の様に生きがいを感じにくくなってきました。仕事が嫌ではありませんが「このままで大丈夫なのかな？」と思うようになってきました。

次第に、会社をサボるほど億劫になってきましたが、家族には相談もできません。これから先の事を考えると、激しい腹痛がします。

【状況】

仕事にも慣れ、会社に不満はないが、満足もなく、今後の人生について漠然とした不安がある。やる気がでない。

【思考】

他の人は充実している様に感じるのに、自分は何で満たされないのだろう。

もしかすると、今後の人生は、夢も目標もない淡々とした毎日の繰り返しなのかもしれない。

【気分】

憂鬱・虚無感・不安感など

【反応】

疲労感・不眠・食欲低下・腹痛など

【実際の行動】

仕事が手に付かず、一日が終わった。

【できなかった行動】

仕事に役立つスキルを調べてみる。

あくまで例なのですが、この状況では負の無限ループにはまるのは当然だと分かります。

重要なのは、現状を整理して俯瞰的に見る事です。

【できなかった行動】は、患者にできる可能性であり、そこから打開策が生まれるかもしれません。

もちろん、行動をする努力が必要ですし、継続し結果を出すためには資本となる生活習慣が大切だと、しばらくすると気づくでしょう。

セルフモニタリングは、自己の認知の歪みに気づかせてくれます。

そうすることで、初めて行動や感情が適切にコントロールできるようになるでしょう。

自己理解。自分は怪しいぞ。と思う人は、セルフモニタリングしてみてください。