痛みがでたら最初に『急性・慢性』を整理しましょう～慢性疼痛～その①

実は患者さんが知っている「痛み」や「治療法」は、急性疼痛の概念がほとんどで、慢性疼痛には当てはまりません。

筋肉や関節が損傷しているから痛む。手術すれば治る。痛み止めが効く。動かさないほうが良い。

これらは全て、慢性疼痛では効果が無かったり、逆に悪化させてしまう要因になったりしてしまいます。

慢性疼痛は、単に急性が長引いているもの。と思うのは症状を拗らせる元にもなりますので、きちんと整理していきましょう。

少し長くなるので２回に分けます。

慢性疼痛（原因・期間・診断）

慢性疼痛の痛みの原因は、中枢神経系の機能変化とあります。

つまり、脳にある痛みを感じる機能そのものが、神経可塑性によって変化し、痛みを引き起こしている。ということです。

ここで言う「神経可塑性」とは、繰り返しの刺激によって過敏になった神経機能が、刺激がなくなった状態でも元に戻らずに、過敏状態が続くことで、簡単に言えば「組織の損傷が無くても痛みを感じてしまう」状態です。

そして、その痛みは心理社会的要因によって修飾（増減する）されます。

心理社会的要因とは、以前は心因性や精神的と言われていましたが、要はストレッサーになる心理的・社会的な要因全てです。

怪我や病気をしていない（損傷していない）にも関わらず痛みが何カ月も、何年も続く。

あるいは、損傷後の修復期間を超えているにも関わらず、痛みが治まらない。

病院で検査をしても「異常ありません」「ストレスです」「自律神経の乱れです」「精神的なモノです」と言われて、原因がハッキリしない。

これは、慢性疼痛でよくある特徴です。

「緊張して胃が痛くなった」など、怪我でも病気でもないにも関わらずに痛みが起こることは、良く知られています。

急性疼痛の場合、損傷してしまった細胞・組織が元の状態にまで修復すると、痛みも消えますが、細胞・組織の損傷が見当たらない慢性疼痛では、そういうわけにもいきません。

ガイドラインでは、慢性疼痛は典型的には３カ月以上持続する、または通常の治癒期間を超えて持続する痛み。とされています。

患者さんからすれば、感じている痛みは本物ですので、病院で「検査異常なし」と言われても納得いかず、異常を見つけ出すために他の検査を繰り返します。

度重なる検査は、それ自体がストレスになりますので、検査が悪化の要因になってしまうことも珍しくありません。

さらに、検査で「原因ではない原因」が見つかることもあり、不必要な薬の影響で症状を拗らせることにも注意が必要です。

慢性疼痛において、診断の意味は急性疼痛のそれとは異なり「原因が見当たらない」つまり「急性ではないことの確認」と思うと良いでしょう。

慢性疼痛（原因・期間・診断）まとめ

・ 痛みの原因　→　原因はハッキリしない（細胞・組織の損傷ではない）・脳など中枢神経機能の興奮や過敏状態によるもの・心理社会的要因により修飾される。

・ 痛みの期間　→　典型的には3カ月以上。損傷した細胞・組織の、通常の修復期間を超えて持続する。

・ 診断の目的　→　原因となる損傷部位がないかどうかの確認（急性疼痛ではないかの確認）